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桑姫社

長崎市の有名な夜景スポット、稲佐山へとのぼる長崎ロープウェイ。

その乗り場がある淵神社の境内、

本殿の左の方にひっそりとたたずむ小さな社に桑姫という人物が祀られている。

 

この桑姫は大友宗麟の孫(父親は大友義統)で、

母の菊姫(義統の正室)が宗麟に命じられて洗礼を受けた際、いっしょに受洗し、

「マキシマ」(淵神社に建てられた説明板によると「マキゼンシャ」)

という洗礼名を授かった(ちなみに菊姫の洗礼名は「ジュスタ」)。

 

その桑姫がなぜ長崎の神社に祀られているのかというと、

桑姫は母ジュスタとともに大阪で人質となっていたが、

父の義統が文禄の役の際の失態で秀吉の怒りを買って

改易となったことを受けて母子ともども大阪から追放されてしまう。

そして一説では桑姫は長崎にいた大友宗麟の後妻

ジュリアに引き取られて、長崎で亡くなったという。

 

淵神社に設置された説明板によると、

桑姫は「長崎に亡命し、隠れ住みながら、桑を植え蚕を飼って、

近隣の娘たちに糸の紡ぎ方を教えていた」らしい。

それで桑姫と呼ばれるようになったのか、

元から桑姫という名前で、そこからの連想でそんな逸話ができたのか

そのあたりはよくわからないけど、

桑姫社にはマリア像といっしょに桑の葉が供えられていた。

 

この桑姫社以外にキリシタンを祀った神社としては、

外海の枯松神社(祀られているのはサンジワンと呼ばれる宣教師)と、

朝鮮人女性ジュリアおたあを祀った伊豆大島のおたあね大明神がある。

しかし、先日とある講演で聞いた所では、

それ以外にもいくつかあるとか。また機会があれば調べてみたい。

 

余談だけど、桑姫の父、大友義統については、

白石一郎の「凡将譚」という短編で読んだことがある。

タイトルから分かるとおり偉大な父、宗麟に比べると、

どうしても見劣りのする人物だったらしい。

Wikipediaに書かれている逸話とかもなかなかひどい・・・。

大友宗麟を主人公にした小説は、

遠藤周作の『王の挽歌』ぐらいしか読んだことがないけど、

義統や妻のジュスタ、桑姫のことなどは特に書かれていなかったと思う。

[アクセス]

長崎バス「下大橋」行きなどに乗って「ロープウェイ前」で下車。

長崎駅前からなら10分弱。

 

[本]

・白石 一郎 「凡将譚」(『島原大変』に収録)

・遠藤 周作 『王の挽歌』

 

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