ザクセンハウゼン強制収容所
2012年9月、ひさしぶりにヨーロッパへ。
フィンランド経由でベルリンに入り、
約二週間でドイツ、オーストリア、スロヴァキアとまわる旅をしてきた。
ドイツは、まだ行ったことのなかったベルリンに絞ることにして、
プレンツラウアーベルクのアパートを借りて一週間ほど滞在。
出発前に平出隆『ベルリンの瞬間』などを読んで想像を膨らませていたのだけれど、
実際に訪れたベルリンは想像以上に刺激的な町で、
毎日相当歩き回ったけどそれでも一週間ではまったく足りないくらいだった。
ベルリン滞在前半はやはりベルリンの壁やテレビ塔や博物館島や、
ヴィム・ヴェンダース『ベルリン 天使の歌』でおなじみの戦勝記念碑とか、
同じ映画でコロンボが立ち寄ったカリーヴルストのスタンドだとか楽しい街歩きをしていたんだけど、
終盤になって、大好きなドイツだからこそやはりポジティブでない側面も見ておきたいと思って、
ベルリンの北にあるザクセンハウゼン強制収容所に行ってみることにした。
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悪名高いナチス強制収容所の標語。「働けば自由になる」

ベルリン中央駅から電車で30分ほど。ベルリン市内ではなくポツダムを州都とするブランデンブルク州の町。観光案内所でパンフレットをもらう。

立ち去る前にもう一度入り口に立って見回してみた。人の少ない日に来ることができてよかった。

悪名高いナチス強制収容所の標語。「働けば自由になる」
天気は悪いし博物館は休館日ということで、人はほとんどおらず。
着いて初めのうちは数人いたけど、すぐに誰もいなくなった。
もっともそれに気づいたのはだいぶ後のこと。
門をくぐってすぐ雰囲気にのまれてしまい、周りのことなどまったく目に入らず、
しばらくしてからふと我に返って敷地内を見回したら自分以外に誰一人いないということに気づいた時は、
大げさかもしれないけど、世界に自分しかいなくなってしまったような感覚に襲われた。
ナチスの強制収容所と言えばやはり、かつて長崎で暮らしたコルベ神父や、
『夜と霧』のヴィクトール・フランクルがいたアウシュヴィッツが思い浮かぶ。
それ以外だと、カフカの恋人、ミレナ・イェセンスカが収容されたラーフェンスブリュック。
映画『シンドラーのリスト』に出てきたクラクフ・プワシュフ強制収容所。
ザクセンハウゼンについてはトーマス・バーゲンソール『幸せな子』という本を読んだことがあるけど、
やはりアウシュヴィッツのインパクトが強すぎて、どんな場所なのかイメージできないまま現場に行くことになった。
ザクセンハウゼンはアウシュヴィッツほど知られているわけではないけれど、
それでも実際に訪れてみてその恐ろしさは十分に感じることができた。
思うに最初に受付でもらったパンフレットで収容所の見取図を見た時点で、
幾何学的で整然とした作りが十分恐ろしかった。
バラックなどは大部分が取り壊れていたけど、
もし当時のまますべての建物が入り口から放射状に並んでいたらと、
その光景を想像すると心底ぞっとする。
博物館部分を見ることができなかったのは残念だけれど、
人が全然いない状態で見ることができたのは本当によかった。
観光バスで来た団体とかがいたら印象は全然違っただろうなと思う。
[アクセス]
ベルリン中央駅(Berlin Hbf.)から電車で25分。オラニエンブルク駅(Oranienburg)で下車。駅前からはバスで7分。徒歩で25分ほど。
[開館時間]
8:30~18:00(10/15~3/14は16:30まで) 入場は無料。
月曜日は、博物館などは休館日。外の収容所跡には入れます。
[本]
・平出 隆 『ベルリンの瞬間』
・ヴィクトール. E. フランクル 『夜と霧 新版』
・M. ブーバー=ノイマン『カフカの恋人 ミレナ』
・T. バーゲンソール『アウシュビッツを一人で生き抜いた少年』