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大村のキリシタン関連史跡

長崎県大村市。ここに残されたキリシタン関連の史跡は、

「首塚」、「胴塚」、「鈴田牢」など血なまぐさい場所が多い。

そのせいかこれまでなんとなく見るのを避けてしまってたんだけど、

先日主な場所をいっぺんに巡ってきた。

なぜこんなにも殉教にまつわる史跡が多いのか。

それは大村の歴史と関係がある。

 

戦国時代、1563年(永禄6年)に大村純忠は洗礼を受けて

日本初のキリシタン大名となった(霊名はバルトロメオ)。
その純忠の奨励もあって家臣や領民も次々とキリシタンとなり、

その数は大村領内で最盛期には6万人を超えたらしい。

イエズス会の巡察使ヴァリニャーノと天正遣欧少年使節の派遣を決定したのも純忠で、

この頃の大村はまさにキリシタンの国だった。

 

しかし1587年(天正15年)の純忠の死後、

家督を相続した大村喜前(よしあき)の代になると風向きが変わってくる。

同年、豊臣秀吉が伴天連追放令を発令すると、喜前は領内から宣教師を追放、

さらに徳川の時代になると棄教して日蓮宗に改宗し、

手の平を返したように領内での弾圧を開始する。

天正遣欧少年使節の一人、千々石ミゲルは喜前の甥にあたるが、

棄教して清左衛門と改名したミゲルに対しても喜前は冷たくあたったという。

その後1616年(元和2年)、喜前は手の平返しの代償のように毒殺されてしまう。

 

そして弾圧にも関わらず大村領内にはひそかに多くのキリシタンが残った。

それが発覚したのが1657年(明暦3年)のいわゆる「郡崩れ」である。

城下北部の郡村3村で逮捕者は603名に上り、

永牢20名、取調中の病死が78名、そして打ち首が406名…。

打ち首406名というのはあまりに多すぎたためか、

処刑は大村だけでなく、長崎や佐賀、島原、平戸でも行われた。

大村で処刑されたのは131名。

刑場となったのは放虎原という場所で、ここには現在殉教の碑が建てられている。

先日(2014年11月)に行ったときは、まだ整備中で立ち入り禁止だった。

端の方に一部の殉教者を表したモニュメントのようなものが置かれていたので、

そのうちそれらを敷地内に配置するんだと思う。

 

処刑された人たちの首はさらし首にされ、

その後首と胴体部分とは別の場所に埋められた。それが「首塚」と「胴塚」。

「首塚跡」は国道34号線沿いにあるかとりストアー原口店の裏、

「胴塚跡」は桜馬場交差点から少し入ったところ。

この二ヶ所の距離はおそらく数百メートルぐらい。

本当かどうか知らないけど、首と胴が分けて埋められたのは、

キリシタンが妖術で「復活」すると思われていたからという話を聞いたことがある。

 

禁教令が出たのが1612年だから、それから45年も経っており、

しかもその少し前には島原の乱で幕府は徹底的な仕置きを見せつけたはずだった。

にもかかわらず、そのすぐ近くの大村で

再びこれだけのキリシタンが発見されたというのは、とんでもない事件だった。

「郡崩れ」における異常な弾圧は、

そのまま支配者側が受けた衝撃の大きさだったのだろうなと思う。

 

ところで、大村市立史料館には「無原罪の聖母」というメダリオンが展示されている。

このメダリオン、16世紀にスペイン、マドリードで鋳造されたものだそうだけど、

1639年に建てられた大村藩家老の墓から出土したものらしい。

1639年と言えば、島原の乱鎮圧の翌年。

そんな時期に家老クラスの人物がこんなものを所持していたというのはすごい。

「郡崩れ」はそれから18年後の出来事だけど、

あれだけの規模で信仰が続いていたという事実の裏には、

一部ではあったろうけど藩の側からのひそかな保護もあったのかもしれない。

そしてそれはすでに紹介した多以良の潜伏キリシタン墓地などとも関係があるのかもしれない。

大村の史料館もまだ見ていないので、近いうちに行ってみないと。

【アクセス】

この中では「胴塚跡」が一番見つけるのに苦戦しました。車の場合、空港の方から、TSUTAYAやベスト電器なんかがある県道38号線を大村IC方向へと走ると、国道34号線と交わる桜馬場交差点のちょっと前に「←首塚跡」と書かれた表示板があります。それに従って左に入ると、両側にアパートがありその間の「ここほんとに通れるの?」という感じの細い道を進んで行くと、少し開けた所に出て、そこに「胴塚跡」の像があります。

 

【リンク】

大村観光ナビ「禁教と大村藩」:今回載せた以外にも大村のキリシタン関連史跡がいろいろ。

大村デジタル史料館:大村市立資料館の所蔵品を閲覧できます。

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